(私見)研究者の心構え

  • 日々の研究をする
    • いわゆる研究ばかりしているのではない。半分手を動かす、半分まとめ/アウトプット作業。
    • 必要なスキル
      • 物理が好きであること:(自分自身やたくさんの先人達の)経験からすると、いくら研究能力に長けていても、やっていることが好きでなければ業界に残らないことが多いようだ。「どれくらい好きであるべきか」の答えは人によるが、「朝起きて『物理をしよう』と考えるのでは足りない。起きたらいつの間にか物理をしているのが研究者だ。」とまでは思わない。
      • 普通の勉強力:論文などを読む。ざっと読む論文は1日1つ以上くらい。しっかり読む論文は1-2週間に1つくらい。輪講ゼミなども多い。物理や数学に苦手意識があったらやっていけない。
      • プログラミング・コンピュータの知識理解:解析はエクセルではやらない。C++, python, ruby, shellscriptなどの言語を、やりたい解析ができるレベルで使えるようにする。例えば、datデータを自由に編集し、自由にプロットができる。さまざまなソフトを使うが、往々にしてインストール等が上手くいかない。デバッグにはある程度、コンピュータの知識理解が必須になる。
      • 資料作成:必要十分な内容を聴衆の特性に合わせて組む。
      • 発表力:原稿は用意しない。筋が通った、理解してもらいやすい発表をするのには訓練が必要。質疑応答が上手くできるかは、生まれつきの頭の回転の問題だけでなく、どれだけ幅広く勉強をしたり解析をしたりしたかにもよる。
      • 英語でのコミュニケーション:日本/日本語に閉じた研究をすることはまずない。メール、論文等の読み書き、発表、議論に英語を使う機会は多い。日本人は世界でも特に英語が下手である。少なくともネイティブとコミュニケーションができるレベルの英語力は必要であり、違和感のない英語を使えた方が良いには違いない。
      • 精神力:例え小さくとも世界で誰もやっていないことをするだけあって、上手く進まないことが多い。自分なりに上手く物事を進めるやり方を構築する。自分の力でできることと他人に頼るべきことを自分なりに分ける。こういう研究はこういう環境で行うと進む、というのを知るのも良い。上手くいかない・やる気が出ない時にどうすれば改善するかを知る。
      • マネジメント力:スケジュール管理は非常に大事。自分の特性を知って、研究スケジュールが上手くいくように努める。計画通りにいかないことも多々あるが、それが大きな支障にならないように早めに手を打つ。特に、プロジェクトメンバーとしての研究であれば、もはや個人の問題ではなくプロジェクトの律速にすらなり得る。自分の能力を鑑み、体力的に/タイミング的に/そもそも能力的に、できない仕事は引き受けないのも大事。
      • 上記どれも、大学院に入った段階でできる必要はなく、徐々に覚えていけば良い。ただし、継続してできるかが鍵ではあるし、実際のところ、大学院入学時点であまりに技術が足りていないと、それを大学院の間に埋めきれないこともある。
    • 研究の大変なところとは?
      • 単純作業
        • 単純で正確さを必要とする解析
        • まとめ資料/発表資料/論文作成
        • 実験系では深夜シフトや頻繁な出張、大量の物品運搬など体力を要求される作業もある
      • 創造的な作業
        • 面倒な解析を単純化・自動化するアイデア
        • プログラミング関係のデバッグ作業は時に本当に大変なこともある
        • 聞き手/読み手を想定し、必要十分な内容をストレートに伝える発表資料/論文構成
        • 直近の数ヶ月、1年の研究スケジュールの創出
        • 5年後、10年後を見据えた研究アイデアの創出。これができないと、科研費を獲得できない。すなわち、研究者としてやっていけない。研究の肝心要であるが、何らかの分野で世界の誰よりの深い知識理解があることに加え、幅広い分野の勉強と最近の流行りを知ることが必要になる、大変な仕事である。
  • 研究発表をする
    • 目的
      • 新たな知見を共有する(簡単に)
      • 自分を売り出す(自分の発表/他人の発表での質問時間/雑談 含め)
    • 気をつけること
      • 知識をひけらかす場ではない。たくさん内容を盛り込むべきではない。
      • 研究室や研究プロジェクトの代表として発表するという意識をもつ。逆に、指導する側としては、恥にならないような発表ができるよう指導する責任がある。
      • いらない情報はなるべく省く。例えば説明する気のない図を盛り込まない。
      • 逆に、載せる図などにはなるべく全てを30秒以内くらいで理解できるのに必要十分な情報を載せる。
      • スライド1枚につき1.5分の説明がスタンダード
  • 論文を書く
    • 目的
      • 新たな知見を共有する(詳細に)
      • 自分を売り出す
    • 気をつけること
      • 研究の成果のうち、数十年後に残るものは論文だけ
      • 学生時代は論文の質は大事だが数も大事にならざるを得ない。質とスピードの兼ね合いはどこかで折り合いをつける。
      • まず国語力が根本的に大事。論理がストレートに伝わる内容の取捨選択、段落の組み方、段落内の構成など。
      • 英語の単語や文法も大事。論文は研究室や研究プロジェクトの代表として書くので、恥にならないように。指導する側の恥にもなる。

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